「Κύριος」の版間の差分
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* 例:ローマ書10:9 | * 例:ローマ書10:9 | ||
ἐὰν ὁμολογήσῃς… **κύριον Ἰησοῦν**(イエスを主と告白すれば…) | |||
でも当時「主(κύριος)」という語は、 | でも当時「主(κύριος)」という語は、 | ||
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* 「κύριος」は家庭内でも日常的に使われていた言葉(奴隷がいる前提の社会構造)。 | * 「κύριος」は家庭内でも日常的に使われていた言葉(奴隷がいる前提の社会構造)。 | ||
* 呼びかけでも「κύριε」は一般的。 | * 呼びかけでも「κύριε」は一般的。 | ||
* 奴隷制度が普通だった時代、 | * 奴隷制度が普通だった時代、'''「主人・支配者」としての関係性を言語で明示するのが当然'''だった。 | ||
* 新約聖書での使用には、**その社会的背景を逆手にとった深い意味**がある。 | * 新約聖書での使用には、**その社会的背景を逆手にとった深い意味**がある。 |
2025年5月16日 (金) 13:10時点における版
「κύριος(キュリオス)=主人」という語は、ローマ帝政期のコイネー世界ではすごく日常的かつ社会的に重要な語だったんだ。
「κύριος」の基本的な意味
- 語源:κύριος は「力をもって支配する人」「権威ある人」って感じの意味がある
- 基本訳:「主」「主人」「支配者」「(家の)あるじ」
- 女性形:κυρία(キュリア)=奥様
🏠 日常生活における「κύριος」
ローマ帝政期(紀元1〜3世紀)には、ギリシャ語を話す地域(エジプト、シリア、小アジアなど)でも奴隷制が根付いていて、
- ごく一般の市民家庭でも奴隷を所有していた
- 奴隷は身の回りの世話、帳簿、教育係、農作業など、さまざまな役割を担っていた
そのため、
- 「**ὁ κύριός μου**」=「私の主人(=雇い主や家の主)」
- 「κύριε!」=(呼びかけ)「旦那様!」とか「お方!」のニュアンス
みたいな表現は**日常会話レベルで普通に使われていた**と考えられてる。
🗣️ 呼びかけの「κύριε」(呼格)
ギリシャ語には呼格(誰かに呼びかける形)があって、「κύριος」は呼びかけると:
- κύριε(キュリエ)
これは単なる文法的な変化だけじゃなくて、
- 「おい、主人」
- 「旦那様」
- 「先生」(尊敬を込めた呼びかけ)
としても使われた。
🙇♂️ キリスト教と「κύριος」
この語は新約聖書でもめちゃくちゃ重要。
- 「イエスを κύριος(主)と呼ぶか否か」は、信仰告白そのものだった。
- 例:ローマ書10:9
ἐὰν ὁμολογήσῃς… **κύριον Ἰησοῦν**(イエスを主と告白すれば…)
でも当時「主(κύριος)」という語は、
- 奴隷の主人にも、
- 皇帝(カイサル)にも、
- 神々にも
使われていたから、「イエスを主と呼ぶ」とは「他の権威よりもイエスを上に見る」という社会的にも強烈な宣言になったわけ。
🧠 まとめ
- 「κύριος」は家庭内でも日常的に使われていた言葉(奴隷がいる前提の社会構造)。
- 呼びかけでも「κύριε」は一般的。
- 奴隷制度が普通だった時代、「主人・支配者」としての関係性を言語で明示するのが当然だった。
- 新約聖書での使用には、**その社会的背景を逆手にとった深い意味**がある。