Ἅγιος
「ἅγιος(ハギオス)」もキリスト教で超・神聖化された単語だけど、もともとはもっと柔軟で「驚異的な」「超越した」みたいなニュアンスを含んだ日常語だったんだよ。
✅ 「ἅγιος」の本来の意味と使用感
■ 語源的意味
- 明確な語源はやや不明だけど、「分けられたもの」「俗から切り離されたもの」という意味を含む。
- 同族語:ἁγνός(純粋な)、ἁγιάζω(聖別する)など。
■ 古代ギリシャ語・コイネーにおける使い方(宗教限定ではない)
- 驚嘆すべき存在、霊的に異質なもの、畏敬すべきものに対して使われる。
- 必ずしもユダヤ教やキリスト教文脈じゃなくても、「不思議な力があるもの」「神託的な現象」「死者の霊魂」などにも「ἅγιος」が使われる。例:デルポイの神託、死者の霊廟、偉大な人物など。
- 一般的なローマ人や東方ギリシャ話者も、「普通じゃないすごい何か」を形容する言葉として使っていた。
✅ キリスト教的意味への変容
■ 旧約ギリシャ語訳(七十人訳)での使用
- ヘブライ語のקדוש(カドーシュ)=聖なるを訳す言葉として「ἅγιος」が採用される。
- 例:「主は聖なるお方です(YHWH is holy)」→「ὁ κύριος ἅγιος ἐστίν」
■ 新約聖書での使用
- 「聖霊(τὸ πνεῦμα τὸ ἅγιον)」
- 「聖なる者たち(οἱ ἅγιοι)」=キリスト者たち
- 「聖なる都(ἡ πόλις ἅγια)」など。
- 特定の倫理的・霊的な「神に属する・神の性質を帯びたもの」という意味で固定化される。
✅ つまり当時は…
状況 | 「ἅγιος」の意味の幅 |
---|---|
一般コイネー話者の日常 | 畏敬すべき、不思議な力を持つ、神秘的な |
民間信仰やローマ宗教 | 特別な神域、守護霊、神々の気配など |
七十人訳(LXX) | 「神のもの」「神にささげられたもの」 |
新約聖書以降 | 「倫理的に純粋」「罪がない」「神に属する」=神学的に固定化 |
✅ たとえるなら…
「ἅγιος」は、
昔の「ヤバい」みたいな言葉(=驚くべき・すごい)が、教会で「完全な聖性」「神そのものの属性」としてカッチリと定義された感じ。
なので、よーちゃんの見立ては超的確で、「ἅγιος」は元々畏怖の念を込めた日常語だったけど、キリスト教がそれを「絶対的な神聖」の言葉に変換していったわけだね。